SPring-8の高輝度な放射光を活用した
構造生物学研究環境の開発と整備を行っています

自動測定

自動測定をご希望の方

アンジュレータビームラインのBL45XU、BL32XUでは、タンパク質結晶の自動測定環境を整備し、共用利用での本格運用を2019B期より開始いたしました。 自動測定では、利用者の方に凍結試料をSPring-8に宅配便でお送りいただき、サンプル情報や測定条件をお知らせいただくことで、来所不要の自動測定を実施し、測定後に試料と共に測定データと自動データ処理結果をお返しいたします。課題の手続きは従来どおりですが、条件を満たせば放射線業務従事者登録は不要です。
詳細につきましては、『 自動測定に関する案内 』をご確認の上、是非ご利用ください。| ご不明な点につきましては、自動測定担当者まで、ご連絡下さい。
*サンプルシート、試料の送付には締切りがあります。より詳細な手続きについてはこちらをご参照ください

担当者用メールアドレスmail-in ※アカウントの後ろに@spring8.or.jp

申込に必要な別添書類

自動測定サンプルシート(記入方法については、『自動測定マニュアル』をご参照ください)
自動測定同意書[様式F01-PA]

自動測定と自動データ処理の論文リファレンス

自動測定ZOOおよびそのメンバであるKAMOを用いて良いデータが収集できたり、解析ができた場合には以下の論文をリファレンスとして引用して頂きたく存じます。
我々のシステムが役に立っているということが評価されれば、さらに高度な放射光利用技術開発へと繋がります。ぜひよろしくお願いいたします。

  1. K. Hirata, K. Yamashita, G. Ueno, Y. Kawano, K. Hasegawa, T. Kumasaka, and M. Yamamoto, “ZOO: an automatic data-collection system for high-throughput structure analysis in protein microcrystallography,” Acta Cryst (2019). D75 <doi:10.1107/S2059798318017795>, vol. 75, no. 2, pp. 1–13, Jan. 2019.
  2. K. Yamashita, K. Hirata, and M. Yamamoto, “KAMO: towards automated data processing for microcrystals,” Acta Cryst (2018). D74, 441-449 <doi:10.1107/S2059798318004576>, vol. 74, no. 5, pp. 1–9, Apr. 2018.

自動測定サンプルシート

自動測定を実施する際に、測定内容について専用のエクセルシートに記述していただきます。
自動測定サンプルシートをダウンロードし、編集後、指定の期日までに自動測定担当者(以下、担当者)までお送りください。

担当者用メールアドレスmail-in ※アカウントの後ろに@spring8.or.jp

その他、お気づきの点・不明な点がありましたら、担当者までお気軽にお問い合わせください。

自動測定サンプルシートの記入方法

各数値などの説明については、『自動測定用マニュアル (PDF)』を参照してください。

自動測定後のデータ処理結果について

自動測定後にKAMOによって得られる解析結果及びMerge処理後の結果、それらのレポートについては、『データ処理結果についてのお知らせ (PDF)』を参照してください。

注意事項

自動測定を行う場合以下の左下図のようなCuを軸としたピンを利用することはおすすめしません。


右図:ゴニオ上にマウントしたピン (マウント直後 0min → 5min の様子)が伸びて行く様子
このピンの場合、水平方向に50ミクロン、縦方向に36ミクロンのずれが生じていました。
Cuピンで特に顕著ですが他の種類のピンについても現在調査中です。(2019/07/17)

FAQ

いわゆるウニ状の多結晶についてはどのような測定条件が適していますか。またどのようにループにマウントすればよいですか?

ひとつの単結晶を取り出してひとつのループにマウントすることが理想ですが、結晶が非常に細いなどひとつの結晶に分離することが困難な場合はmultiモード測定をお勧めしています。結晶の集合体をやや崩してからマウントすると結晶方位がランダムになり、よりmultiモード測定に適するかと思います。ただし結晶個数によっては十分なCompletenessが得られない場合もありますのでご注意ください。

ファインスライスのメリットは何ですか?どれぐらいの振動角にすればいいですか?

フォトンカウンティング検出器(EIGER/PILATUS)では、読み出しノイズフリーなのでファインファイスライスをするのが良いというのが一般的な見解です。スポットの分離に問題が出る場合(大きな格子長を含む。mosaic幅が広い場合など)に備えて自動測定では標準で0.1deg振動を推奨しています。
参考:PILATUSを利用した Fine phi slicing の積分時の効果についての論文

S-SAD測定で推奨される測定条件はありますか?

BL45XUにおいては波長1.9Aでの測定が可能ですが、溶媒の吸収の寄与の影響が大きくなることと、最短カメラ長での検出器のedge分解能が制限されてきますので、もう少し高エネルギー側に設定したほうが良い場合もあります。なお、波長ごとの検出器のedge分解能はこちらより計算できます
Redundancyについては10以上ある方が良いようです。Total osc.は720deg 程度をお勧めしています。また複数の結晶からのデータをマージすることもRedundancyの向上に有効です。

BrのSAD測定の場合、サンプルシートの波長のデフォルト値は0.91Åが表示されますが、より吸収端(例0.9196Å)に近い値ではいけませんか?

BL45XUは自動測定に最適化した設計の為、XAFS測定系を備えておらず、事前に実サンプルの吸収端を正確に確認することができません。分光器のエネルギー分解能は ΔE/E < 2 × 10-4 ではありますが誤差が発生する可能性と、サンプルの化学シフトにより意図しているより低エネルギー側で測定してしまう可能性があります。そのため、測定波長を安全側に設定して推奨しております。
Brの場合下記程度の差であり、フェージングに対する影響は大きくはないのでないかというのがビームラインの見解です。
f“= 3.75 @0.91[Å], f”= 3.82 @0.9196[Å]

事前に測定時間を見積もることはできますか?

1サンプルピンあたりの測定時間の実績がこちらの17ページにありますのでご参照ください。
サンプルピンの種類、LN2滴下(霜の除去)オプションの有無により時間が加算されます。なお測定の途中で、波長もしくはビームサイズが切り替わる場合ビーム位置の自動アライメントシーケンスが入るため測定が一時中断されます。中断される時間は下記のとおりです。
・波長切替時: 約15min.(波長変更による分光結晶の熱負荷の変化が安定するまでの時間を見込んでいます)
・ビームサイズ切替時: 約5min.
そのためできるだけ同じ波長、ビームサイズの測定条件を続けたほうが時間のロスが低減します。 ただ測定の優先順位があると思いますので、その点を踏まえてサンプルシートをソートしてください。

"Hor. scan length [µm]" とはループのカタログサイズのことですか?

“Hor. scan length [µm]” の設定はこちらの8ページにありますのでご参照ください。
“Hor. scan length [µm]“はループのカタログサイズよりも大きくなることにご注意ください。

サンプルシートにExposure timeの入力カラムがありませんが露光時間はどこで設定しますか?

BL45XUの場合、標準の露光時間は0.02sec.となります。データセットのトータルの吸収線量が10MGy(Phaseingの場合は5MGy)になるように、選択した波長とフレーム数に合わせてアッテネータの厚みが自動的に設定されます。

なぜhelicalモードの”Total osc” は360°以上(可能であれば720°)を推奨しているのですか?

単位体積あたりのRedundancyを増やすことで、良質体積が少ない場合にも完全なデータを得るための考え方です。結晶の質が不均一な場合は、途中のデータを削ってもデータセットがCompleteする可能性を高めます。 例えば良質体積が1/2の場合に180°でhelicalモード測定を行うと、収集できる角度は90° ぐらいとなり完全なデータにはならない場合があるからです。そのため”Total osc” は360~720° をお勧めしています。 逆に結晶のすべての部位が良質な場合は、Redundantに収集したデータがシグナル積算に寄与します。 720°を1回と、360° 1回の条件でそれぞれ同じDoseでデータ収集をすると下記のようになり、360°測定に比較して720°の測定では観測回数が2回になるため分解能は同じとなります。
1/2 * I(obs) x 2 = I(obs) (720deg)
1.0 * I(obs) x 1 = I(obs) (360deg)
参考:1/5の強度での5回測定と、1の強度での1回測定とでは同じデータが得られることを示す論文
なお、Helical測定では「ぶったぎりデータ処理」により多くの場合、前述の結晶質の悪い部位の排除ができます。
「ぶったぎりデータ処理」については こちらの4,5ページをご参照ください。

なぜhelicalモード測定の場合、データセットの初めと、終わりだけ回折点が薄い場合があるのですか?

現状の自動測定でのhelicalモードの基本的な考え方は、存在する結晶体積からはすべてデータを撮りきろうということで、結晶の端のクオリ ティが悪いとしても、そこには結晶がありデータ収集ができるためにその部分からも、あらかじめデータを撮っておくということになります。それは現状では結晶の部位ごとの良し悪しが、ラスタースキャンの時点で、機械的に正しく評価することはできないからです。そのため、結晶のクオリティが悪い結晶でもデータ収集を行って、データ処理の時点でそれらが不要ならば棄却するというコンセプトで測定と 解析を行っています。このような理由から、最初と最後の方のX線が当たっていない部分をリジェクトして解析にご利用していただくようにお 願いしています。またhelical測定の際、360°以上、可能であれば720°での測定をお勧めしているのはそのためです。具体的には「ぶった ぎり処理」により多くの場合、回折イメージの薄い部位の排除ができます。ひとつ上のQ/Aもご参考にしてください。

サンプルピンに複数の結晶が含まれる場合のhelicalモード (singleモード)測定はできますか?

helical モードの場合 “# of crystals/Loop” に含まれる結晶の個数を設定してください。ただし、こちらの12ページの右側の図のように結晶がマウントされている場合にのみ測定が可能です。ご注意ください。
なおsingle では “# of crystals/Loop” が2個以上になる場合は対応しておりません。
複数の結晶が、どのようにマウントされているかが不明な場合は、mixed(HITO)モードの利用もご検討ください。mixed(HITO)モードは、ラスタースキャンにより結晶の形状、位置関係を自動的に判断します。なおHITOモードの詳細については こちらの論文をご参照ください。

multiモード測定の場合の“Crystal size”はどのように設定すればよいですか?

こちらの11ページの下側に “Crystal size” について解説があります。
multiモードの場合、”Crystal size” は、露光点の間の最短距離というパラメータになります。ビームサイズ:10×10の場合、“Crystal size” を10に設定されると一番左のように隣接した箇所に露光する可能性があり、露光点間での放射線損傷の伝搬の影響が大きいですのでお勧めしておりません。トータルの結晶個数に応じて、中央か左側の設定を選択してください。

multiモード測定の”Total osc”はなぜ10°なのですか?

まず、multi測定の場合ループの投影面積が小さい方向では、X線の光軸中に複数の結晶が存在する可能性が高まりデータ処理が困難になる可能性があるので”Total osc”の値を大きくとることができないという背景があります。(そのためデータの完全性を確保するため、複数のデータをマージする必要があります。)しかし、LCP結晶構造解析では特にそうですが、multiモードで対象となるような結晶の場合には結晶のクオリティに保証はないので1結晶からできるだけ多くのデータを得たいという要請があります。(できるだけ少ない結晶から完全度を早期に上昇させたい)。またクラスタリングをするので、その個性を表す反射が多いほどクラスタリングが正確になります。これらの理由からできるだけ大きいWedgeサイズを選定する必要があると考えられます、 なぜ10°なのかということについては、ビームサイズが10~20um程度であれば”Total osc”が10°を超えるデータ収集をするとビームが結晶から外れる確率が高くなるためです。こちらの5ページに multiモードの測定スキームが図示されていますのでご参照ください。

multiモード測定をする場合、どれぐらいの結晶個数が最適でしょうか?

10°/crystalのデータ収集の場合、空間群にもよりますが、完全度100%をRedundancy=2で埋めるのであれば30~50個程度データが有れば良いということになります。ただ、実際には良いもの悪いものがありますので、測定すればするほど選択できる幅が広がるのと、シグナルを積算すれば分解能が向上します。まずトータルで100~200個程度のデータが撮れることを目安にすることをお勧めします。結晶の数やループでどの程度の量をすくうかに依存しますが30個くらいの結晶が1ループに乗っている場合には上記目標値を達成するのに5~6ループ(サンプルピン)程度となりますが、良い結晶が得られる確率などは事前には不明なため判断は難しいです。特に初めてのサンプルでは感覚がつかめるまではできるだけ多くの結晶を準備していただくことをお勧めいたします。

KAMO report.html のIdxLatt、Isaはどのようなパラメータなのでしょうか? 

IdxLattについては、IDXREF.LPの中にあるfirst subtree populationの数値です。指数付がうまくいったかを示すものです。こちらのウェブサイトをご参照ください。ISaについては、こちらのウェブサイトをご参照ください。

KAMO report.html のProblems(一番右のカラム)に表示されるステータスはどのような意味ですか? 

下記の条件を一つでも満たせば表示されます。
IDXREF:
・最初に付けた指数の整数性が悪い時(小数点以下1桁目が0のものが9割未満のとき)
・最大のsubtree populationが9割以下のとき
・XPARM.XDSが生成されてないとき
INTEGRTE:
・SIGMARが一度でも1.5を超えてるとき
CORRECT:
・ISaが正しく決まってない,または10未満のとき